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単純に英会話を解明

実を言うと、ビジネスで使う電話の会話は、新入社員当時の私には、たとえ日本語であっても、けっこう難しかった。 「そのまま(電話を切らずに)少々お待ちください」と言って「保留」ボタンを押し、本人を探してみたところ見当たらないので「ただいま席を外しています。
何か申し伝えておきますか〜」と相手に聞き、そのメッージをメモにとって本人の机の上に置く。 こういう単純な応対でさえ、会社に入ったばかりの私にはなかなかうまくできなかった。
だが、こういった定型パターンの会話は、いったんマスターしてしまえばそれほど難しくない。 それは日本語であろうと英語であろうと同じことである。
たとえば会社で、私以外の誰かに英語で電話がかかってきても、8割くらいは次のようなパターン通りの会話で終わってしまった。 勉強のポイントは、ここに掲げたような、ある場面における一連の会話の流れをそのまま暗記して使うことだ。
もちろん、状況によっていくつかパターンはあるが、それらを一通りマスターしてしまえば、それほど難しいことではない。 通訳する場合も、基本は似ている。
特に私のように特定の人に仕える専属の英語屋の場合、その本人の話には同じ内容が何度も出てくる。 初めて通訳するものは難しいが、同じような話を繰り返しているうちに、しまいにはそらでやれるようになる。
Iさんも私が慣れていく様子をよく観察していて、英語屋として務めていた最後の時期には(面倒になったのか)自分では話さずに、「例のあの話ね、あれをちょっと説明してあげてください」と言っては、私に全部英語で説明させることさえあった。 英会話を学ぶための教材は、自分が気に入ったものであれば何でもよい。
もちろん、話し言葉をマスターする以上、カセットテープやCDなどの音声教材(またはビデオ教材)を使う。 私の場合は、カセットテープのついた市販の英会話教材で、短いダイアローグが百個くらい入ったものを買ってきては、それをウォークマンなどで何度も聞いて、ほとんど全部暗唱した。
何十万円もする訪問販売の教材の類ではなく、書店の店頭で数千円で買える程度のものだ。 通訳のような仕事をするならともかく、定型表現の会話をマスターするだけならこれで十分だと思う。

どちらかといえばスピーキングよりもヒアリングのほうが難しい。 ある程度若い時期に英語の音を浴びるように聞いた経験がなければ、年齢を重ねてから聞き取るようになるのはちょっとしんどい。
これがために、英語屋をやっていた当時の私もずいぶん難儀した。 洋画が好きなら、日本語字幕つきの映画などを見るのもいい。
「字幕は見ない」などと頑張る人もいるが、まったく聞き取れないものをいくら聞いても意味がない。 また、自分にとって面白くない映画を漫然と見ていても効果はあがらない。
何度見ても飽きずごフストシーンのせりふなどそらんじて言えるくらい好きな映画を選ぶといいだろう。 最近はあまり映画を見なくなった私だが、独身時代は『カサブランカ』のような古いアメリカ映画が好きで、ビデオにとっては飽きずに何度も見ていた。
有名なコルらが出てくるラストシーンのダイアローグは今でもよく覚えていて、ときどき口にしては妻に笑われている。 要は、自分が必要性を感じている、または興味を持てる(両方ならなおよい・が)ものを教材として使うことだ。
ただし、いくら興味を持てるからといって、アダルト小説やポルノ映画ばかりを教材として使うのはちょっと考えものかもしれない。 その類の「教材」によく出てくる表現を覚えても、たとえば実際のビジネス社会で使える状況はないだろう。
英語も所詮、コミュニケーションの道具に過ぎない。 そういう観点から割り切るなら、相手の言うことがどうしても聞き取れない場合は、別な発想もある。

たとえば、電話で相手の言うことを9割がた聞き取れる場合は問題ないが、逆に9割も聞き取れない場合は、いくら頑張ってみたところでコミュニケーションは成り立だない。 そういうときは、いっそのこと「私はあなたの言っていることが聞き取れません。
ファックス(または電子メール)で送ってください」という表現だけ覚えておいて、そう言ってやったほうが話は早い。 よほど英語ができる人でも、たとえば自分のオフィスまでの道順を教える場合は、電話で説明するよりもファ″クスで案内図を送ってあげたほうが速いし、そのほうが相手も楽だ。
別に「話し言葉」にこだわることはないのである。 自分の会話能力をよく見極めた上で、それに見合ったコミュニケーション手段を選べばいい。
「英会話を勉強する」こと自体が目的化して、たえず手を替え品を替えて膨大な費用をかけながらさっぱり上達しないという方もいるようだが、そういう人は、目標をよく絞り込んで、それを達成するのに自分に適した手段を探すことだ。 Iさんを動かした一通の招待状ソニーのトップともなると、本人が個人的に知らない人や会社などから実に様々な手紙が送られてくる。
一見して明らかにダイレクトメール(DM)だとわかるものなら、開封すらしないでそのままゴミ箱に放り込めば済んでしまうところだが、なかには信書らしく見えるものもあって、返事を出すべきものとそうでないものとを見分けるのに、けっこう手間取ることがあった。 Iさんの海外関係の通信事務を担当していた私のところには、横文字でMr. Ibukaと宛名が書いてある手紙がことごとく回されてきた。
なかには。 Mrbuka。Sony。Tokyo。Japan"としか書いていないものさえある。

それでも届いてしまう以上、開封してみなければならない。 よく見かけたのは、寄付依頼の手紙。
怪しげなものは無視してしまうが、教育関係や社会福祉関係など、Iさんのライフワークに関係がありそうな内容のものは、ごく短い抄訳をつけてIさん本人の目に入れた。 「興味があるのでもっと詳しく読みたい」と言われたら、改めて全訳したものを出すことにしていたが、しかしそういうことはめったになかった。
だいたい、その年度の会社の寄付予算と拠出先はすでに決まっているので、たとえその会社のトップに「直訴」の手紙を送ったところで、どうにもならないことが多い。 第一、このような寄付依頼の手紙を出すなら、相手の会社の正規の担当部門を確認した上で、そこに対して出すべきだろう。
社会貢献事業は、本社ではなく別の財団が担当している場合も多い。 何でもかんでも会長や社長の名前を書いて出せばいいというものではない。
名前さえまったく聞いたことのない大学から「あなたに名誉学位を差し上げたい」などという手紙もよく来た。 これはほとんどの場合、一種の商売だ。
手数料として何千ドルを払ってください、などと書いてある。 隣に座っているKさんに聞いたところ、アメリカにはこういう商売をやっている「大学」がよくあるらしい。
「今年の○○賞を差し上げたいので、記念講演をしに来てください」という手紙にも怪しいものが多い。 誰でもいいから有名人をタダで呼んで、その団体の行事に箔をつけたいという意図が見え隠れしている。
この類の手紙は、全部ゴミ箱に直行。 ソニー製品を持っているお客様からの意見や質問の手紙などもよく来た。

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